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となりのトトロ
 子どもたちがきらきら星を完璧に歌えるようになると、私は次にとなりのトトロの歌を教えることに決めた。
 歌詞をローマ字で画用紙に書き、早速子どもたちの前で歌ってみせる。ちなみに世界的に有名なトトロもニュージーランドでは全く知られておらず、ほとんどの子どもたちがトトロの歌を耳にするのは初めてだ。初めて聞くトトロの歌が、私の歌声だというところが申し訳ない。
 歌い終わった後、子どもたちからの質問。
子ども  「トトロって何?」
わたし  「絵を見せてあげたいんだけど、先生は持ってないんだよね。」
そこで、私はホワイトボードにトトロを描いてみせた。
わたし  「だいたい、こんな感じかな」
子ども  「わかった!トトロってのはブタなんだね!」
( ̄□ ̄;)!!
ホワイトボード上の私の描いたトトロを見直してみた。確かにブタである。ブタ以外のなにものでもない。初めて見るトトロの姿が、私の描いたブタであるところもまた申し訳ない。
 その後、私はインターネットでトトロの絵を印刷して、子どもたちにトトロはブタではないことを伝えた。
日本
 ある日の授業中、うちのクラスの担任の先生が子どもたちにこんな質問を投げかけられた。
「島国って言ったらどういう国があるかな?」
何人かの子が手を挙げ、最初に当てられた子の答えは
「日本!」
私はこの答えが一番最初に出たことに正直とても驚いた。NZの近くにはフィジー、サモアなど南太平洋の島国がたくさんあり、しかもNZ自体が島国であるのに日本という答えが最初に出たのだ。6歳の子どもの口からである。NZの普通の6歳児は日本がどこにあるかも、ましてやそれが島国であることなどまず知らない。
 私はこのクラスで教え始め一年近くになるが、クラスの子どもたちは私をきっかけに日本という国に対して関心をもってくれていたのかと思い嬉しくなった。
遠足
 最近低学年だけでの遠足があった。遠足と言ってもちょっと出かける程度である。
 うちの学校は海に近いため、海岸沿いを歩いているととても気持ちが良かった。いつもの教室の前のベンチではなく、その日は海を見ながら芝生の上で昼ご飯を食べた。子どもたちもとても嬉しそうである。
 この海岸沿いの一部には新しく土地が整備され、新築の家ばかりが集まっている高級住宅地がある。遠足の途中その地域も通り、私はきょろきょろしながら、子どもたちと「いい家ばっかりだねぇー」と話しながら歩いていた。庭先で草花に水をあげているおばさんに挨拶をしたりすると、一瞬その地域の住人になったような気分になれるのでお得である。そんな感じで私が空想の世界に入りかけたその時だ。
子ども 「ここにうちの家があるんだよ!」
私    「はっ?」
子ども 「ここにうちの新しい家があるんだよ!」
冗談を言ってもらっては困る。
子ども 「この道を右に曲がったらうちの家があるんだよ。」
( ̄□ ̄;)!!どうやら本当であるらしい。大学時代私が住んでいたアパートを思い出し、その子の家と比べてみた。惨敗である。私が今ステイしている家を思い浮かべてみた。これまた惨敗である。高級住宅地の住人の気分になり楽しんでいた私をしっかり現実へと引き戻してくれた。
握手
 こっちの小学校にもいろいろなタイプの先生がいるが、子どもをよくほめる先生はとにかく多い。そういう先生は見ているだけでもとても勉強になる。
 私はある先生が子どもと握手をされているのをみてこれは真似しなければと思ってからというもの、子どもが何か特別にいいことをした時には必ず握手をするようにしている。握手をした時の反応はもちろん子どもによりばらばら。ニコニコ笑って喜ぶ子から無表情な子までいろいろだ。普通に握手をしているだけでは子どもも飽きてくるだろうが、握手したてを上下に大げさに振ってみたり、両手で握手してみたりバリエーションを変えると新鮮なようである。
 先日スペリングのテストをしていた時の話(スペリングのテストがどういうものなのかは日本でよくある漢字の小テストを思い浮かべてもらえば理解が早いと思う)。いつも満点をとる子がいるのだが、その日はその子と握手をする代わりに頭をなでてあげた。特に深い考えはなく、その日はなんとなく握手の代わりに「よくできたね」と頭をなでてあげたのだ。すると後になってからその子が私のところに来てこう言った。
「今日は握手しなかったね。。」
どうしても握手をして欲しそうな顔をしていた。その子にとっては握手というものが特別に大切なようだった。
 私がその子の両手をつかんで大きく握手をすると、その子はいつもの笑顔を見せてくれた。
クリスマスパレード
 NZではクリスマスが近づくと、多くの地域でそれぞれのクリスマスパレードが開かれる。私の住んでいる地域のクリスマスパレードには、うちの小学校からも参加することになっていた。
 学校のスタッフで飾り付けをしたトラックの荷台に乗りパレードの出発地点へと向かう。到着すると、そこには参加するたくさんのトラック。私が昔ボランティアをしていた小学校も参加していて、懐かしい顔に会うことができた。
 うちの小学校のトラックの主役はもちろん、いろいろなコスチュームに身を包んだ子どもたちであるが、私も他の先生が持ってきていた帽子を借りてパレードに参加。この帽子はサンタの帽子などではなく、ピエロがかぶるような帽子だ。ピエロ帽子がクリスマスパレードの中で、何の芸も持たない私の頭の上にのっている。間違っているのは知っていたが、気付かないふりをしておくことにした。
 パレードが始まる。トラックの荷台に乗れるのは限られた数の子どもだけなので、何人かの子はトラックの前を歩き、私はその先頭を歩いた。つまり、そんなピエロな私がうちの小学校のグループを先導しているのだ。ここでも間違っているのは知っていたが、気付かないふりをしておくことにした。
 パレードは参加するのと観るのでは全然違い、参加するほうが何倍も楽しい。そのことが良く分かった一日だった。
ファイナルアセンブリ
 12月の初め、私は今年の締めくくりにRoom11の子どもたちと何か発表したいと考えていた。ちょうど12月の中ごろにはクリスマスコンサートがある。私はクリスマスコンサートで子どもたちが日本語の歌を発表できるよう校長先生にお願いし、許可をもらった。
 ただその話は後で少し変更になり、クリスマスコンサートではなくその翌日にあるファイナルアセンブリ(卒業式)の中でうちのクラスの子どもたちは「きらきら星」を英語と韓国語と日本語で、「ジングルベル」を英語と日本語で歌うことになった。
 ファイナルアセンブリへ向けての練習。きらきら星は以前に練習したことがあったので問題はなかったが、問題はジングルベルだった。きらきら星よりテンポも速く、歌詞も長い。英語の歌詞でさえうまく歌えない子どもたちにとって、何の意味もない音の並びである日本語で歌うことはかなり難しい課題だ。練習期間として与えられた2週間がとても短く感じられ、不安でいっぱいだった。
 しかし、練習をはじめてしばらく経ったころ保護者からはこんな言葉も聞かれた。
「子どもが家でジングルベルを日本語で歌って聞かせてくれますよ」
休み時間にジングルベルを口ずさむ子どももでてきた。
 本番5日前。サビの部分はほとんど全員が歌えるようになっていた。しかし、サビ以外の部分は全く歌えていない。私はサビ以外の部分を四つに分け、それぞれの子どもに自分が受け持ったパートだけを完璧に歌えるように頑張ろうと伝えた。そうすることで子ども一人ひとりが「このパートは自分が頑張らなければ」と感じてくれるのを期待した。
 本番当日。最後の練習では、何人かの子は自分のパート以外もしっかり歌えるようになっていた。衣装として用意したサンタの帽子を子ども一人ひとりに配る。
 そしてアセンブリが始まる。30分くらい経つと、
 ‘Are you ready, Daisuke?’
司会の校長先生の声が聞こえた。「はい」と答えたが、子ども以上に緊張していた私はまったくレディではない。
 舞台の上に子どもたちを並べる。私はギターを弾かなければいけないため、子どもたちのすぐ横の椅子に座る。
 代表の子が挨拶。
‘レイ! We are now going to sing Twinkle Twinkle Little Star and Jingle Bells in English, Korean and Japanese.’
礼などNZではほとんどしないので、これも一から教えたものだった。練習の時よりきれいに出来た。続けて他の子が挨拶。
「コレカラ、キラキラボシ ト ジングルベル ヲ ウタイマス。」
この子はこの挨拶を家でも一生懸命練習してきていた。とても上手。
 まずはきらきら星。英語、韓国語、日本語の順に歌う。この子達は人前で歌うときは歌うのが速くなってしまう癖が出るが、歌詞は完璧だった。
 次にジングルベル。まだ自信がないサビ以外の部分は声が小さくなってしまったが、サビは元気に歌うことができた。
 決して完璧な発表ではなかったが、たった2週間の練習で7歳の子どもたちがここまでやってくれたことがただ嬉しかった。

 発表が終わりほっとした私は子どもたちと一緒に舞台を降りた。すると校長先生が私にまた舞台に上がるように言われる。舞台の上では校長先生だけではなく、うちのクラスの子ども二人も立っていた。
「一年間、私たちのクラスで教えてくれてありがとう。」
代表の子どもたちはそう言ってプレゼントを渡してくれた。
 私がこの学校に来てからもう一年が経っていたのだ。突然現れた日本人の学生を一年間も受け入れてくれている子どもたち、先生、保護者に私の方が感謝の気持ちでいっぱいだった。 

 アセンブリ後の休み時間、初めてお会いするおばあさんが私の方に寄って来られ、何かを言われた。年齢のためか、はっきりと話される方ではなかったので私は二度ほど聞きなおす。三度目でやっと聞きとれた。
「あなたの子どもたちの歌はすごくよかったですよ。」

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